【コラム】志望校に合格させるのは難しくない。一人一人に向き合い、世界に羽ばたく生徒の可能性を伸ばす

※「朝日マイベストプロ」過去掲載(2021年11月)されたコラムのアーカイブ(再掲)です

 中央区勝どきで個別指導塾「ウイズ学習会」を運営しつつ最前線で授業を行う濁川正夫さん。講師1人で生徒1~3人を指導するシステムのもと、小学生から高校生まで20年以上個性豊かなお子さんたちをサポートしてきました。2017年には同じ中央区の新川にも教室を開設し、2拠点体制を敷いています。

 「個別指導や個人指導では一人一人に合わせた学びを提供できます。面談でご本人や保護者の希望を伺いつつ体験授業を通じて学力を見極め、教材やカリキュラムを的確にカスタマイズします。本人や保護者の考えが変わったり短期間で成績が伸びたりすれば都度柔軟に対応します。志望校に合格させることは難しくありません。生徒が自分の才能に気づき、伸ばしてあげることを大切にしています」

 志望校対策だけでなく、苦手を克服したいという要望もあれば1学年先の内容を早めに学びたいという声もあります。その一つ一つに親身に応じる濁川さんに引かれ、さまざまな生徒が集まってきます。


 「小学3年生で英検3級を取得した女の子が、準2級に合格したいので力になってほしいとやってきました。その子のお姉さんが中学受験のために当塾に通っていたので『濁川さんなら』と親御さんに相談されたのです。それまで小学生に高校生レベルの英語を教えたことはありませんでしたが、さっそくプランを組んで授業を開始しました」。その生徒は入塾から最初の試験で点数が500点伸び「あと3点で合格」という段階に到達。2度目で見事合格を果たしたそうです。

教えることへの可能性を見いだし、ドラマーから塾業界へ

 濁川さんは「今の仕事に就くとは全く想定していませんでした」と明かします。大学在学中にアメリカのオレゴン州に留学。現地の大学を卒業後に帰国し、幼い頃からの夢だったドラマーとして の道を歩み始めました。

当時はイベントで演奏したり、インストルメンタル(歌唱なしの楽曲)サウンドの収録に参加したりして、生計を立てていました。

そんな濁川さんは他バンドのドラマーから技術的なアドバイスを求められるなかで、教育者としての資質に気付いたと言います。「具体的でとても分かりやすいと感謝されることが何度もありました。高校生の時、小学生だった親戚の子の勉強を見た時もそう言われたので、教える才能があるかもしれないと感じたんです」


 自身の強みを生かそうと、大学卒業から3年後、音楽活動をいったん休止した濁川さんは塾業界へ飛び込みます。教員免許を持っていたため学校の先生にもなれましたが、大勢の子どもを教育するより少人数制で目の前の生徒一人一人に全力で向き合いたいという信念がありました。


 以来、学習塾や予備校を渡り歩きながら授業だけではなく教務や総務、教室長など、多くの業務に携わります。生徒や保護者との接し方に始まり、テキストの選定や学習計画の立て方、教室運営のコンセプト、集中力の増すレイアウトなど多くのノウハウを身に付け、1999年、満を持して独立します。


 「最初はマンションの一室で自分の娘やその友達を教えていましたが、ありがたいことに口込みだけですぐに手狭になったので、2000年に広い教場に移りました」

講師志望者と学習塾を仲介するプラットフォームを作りたい


 日本では少子化が進み、学習塾や予備校業界に「冬の時代」が訪れているとも言われていますが、濁川さんは大方の予想に反し、「塾は形を変えながらも必要とされ続けていくと考えています。今は非常にチャンスだと思っています」と明るい表情で話します。というのも双方向でコミュニケーションがとれるビデオ通話のアプリケーションが普及し、直接塾に通えない子どもたちにも個別指導ができたり、自宅学習をどうサポートすればよいのか分からない親御さんの、遠方からの質問にも応じたりできる環境が整ってきたからです。ウイズ学習会でも徐々に受講希望者が増え、濁川さんは最近、北海道の生徒とオンライン受験指導を行いました。


 「塾と学校の違いについて学校の先生が生徒に問うたところ、多くの生徒が『塾は進化する』と答えたという話があります。生徒たちはいつも、大人にはない感性で本質を見抜くのかもしれません」


 濁川さんには取り組みたいことがあります。「コロナ禍で優秀な方が職を失ったり収入が減ったりしています。そうした方に副業として講師を勧めたいのです。講師になりたい方と学習塾をつなぐプラットフォーム作りも構想しています。ITや潜在的なマンパワーの力を使えば、より透明性の高い良心的な民間教育の実現を計れるでしょう。賛同してくれる方々と協力していきたいですね」


 生徒にとって相性の良い講師もいればそうでない場合もあります。講師が増えるほど生徒の選択肢が増え、いっそう個々に寄り添った教育機会の広がりが実現できます。濁川さんの挑戦はまだ道半ばです。


(マイベストプロ記事より再掲 取材年月:2021年11月)

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